コロナウイルスの影響で日本全国の自然学校が窮地に立たされている

2020年4月23日付で、公益財団法人 日本環境教育フォーラム(JEEF:ジーフ)

新型コロナウイルス感染拡大に関する自然学校等への影響調査

というレポートを公開した。

公開に関するJEEFのニュース

自然体験活動協議会(CONE)、日本アウトドアネットワーク(JON)、JEEF連盟のレポートによると、コロナウイルス影響拡大防止のために、日本全国の自然学校のイベントやキャンププログラムが中止・自粛に追い込まれ、甚大な損失を計上しているという。レポートによると、236件の団体からの回答をまとめると、「売り上げの損失見込みが業界総計18億円」というショッキングな内容となっている。概要によると、

  • 4月末までに100万円以上の被害が見込まれる団体は半数近くに上る(平均約310万円/団体)
  • 今後100万円以上の被害が見込まれる団体は6割超(平均約627万円/団体)
  • 6割超の団体が「法人経営に現在影響が出ている」と回答
  • 新型コロナウイルスの収束後も、三密を避けた自然体験プログラムを実施することが当分の間必要であり、感染症対策を盛り込んだ安全管理マニュアルの策定が望まれる

という調査結果となっている。また、本来の参加者である子どもたちにとっては「自然と触れ合う機会が減少」し、「子どもたちの生きる力が失われることが懸念される」と指摘されている。

(以上、レポートより)

筆者も複数の自然学校のプログラムや運営にかかわってきました。多くの自然学校が高度経済成長期の環境破壊とそれに伴う自然体験の減少にアンチテーゼを唱えることを出発点としており、パワフルな代表者が熱い想いとともに設立し、情熱をもって運営してきた経緯がある団体が多い印象です。

そんな中には「お金儲けよりも子どもたちに体験を」という情熱先行型の組織も多く、決して経営が上手とは言い切れない団体も多くあります。端的に言うと、経済的な余裕がないということです。

一般企業にも言えることでしょうが、大企業を除いて、3か月ほども企業活動が停止していて生き残れるほど余裕がある団体がどれほど存在するでしょうか?

自然学校の多くが夏休みのキャンプイベントをメインの収入源とし、その他長期休暇の日帰りプログラムなどを合わせて何とか1年運営している状況だと思います。2020年春休みはステイホームが推奨されたために活動が行われず、夏にかけてもどれほどキャンプに親御さんが子どもを送り出すでしょうか?ワクチンが開発されるまでは、大規模な宿泊イベントなどは実施しづらい状況が続くことが予想されます。

「自然体験活動」という活動形式はまたオンラインへの移行が難しい分野でもあります。多くの団体が、自然の中での体験や、集団生活の中でのそれぞれの人の関係性づくりを通じて人間の成長を促す方法を取っているからです。オンライン会議ツールを通して森の中へ入り、集団生活を模擬体験することにどれほど効果があるでしょうか。

まずは、現在のコロナウイルスの感染拡大がひと段落することを願いつつ、各団体では活動再開に向けたガイドラインやマニュアルなどを作成しています。

自然体験活動のプロとしてのスキルを持った団体が存続できないとなるとこれは日本の子どもたち、ひいては日本の将来にとって大きな損失です。

ぜひ、身近なことから、自然学校を応援していきましょう。もしできるなら寄付を。将来の参加権を先に購入できるようなシステムができるといいのですが。

ネイチャーエデュケーション

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