子どもをキャンプに行かせよう。良いキャンプ選び方とは?

※今回の記事は自然学校や野外教育団体が主催している集団教育キャンプ(いわゆるサマーキャンプ)などを対象に書いています。家族で行くファミリーキャンプについては改めて書きます。

日本にはいろいろなキャンプがある

日本には約3000の団体がキャンプなどのプログラムを提供していると言われています。自然学校、青少年教育団体(YMCAYWCAなど)、ボーイスカウトガールスカウト、子ども会、、スポーツクラブ、その他民間団体、非営利団体…などです。

それぞれの団体がそれぞれの想いをもって、キャンプ(集団での宿泊プログラム)を展開しています。対象年齢、、場所、環境、人数、期間はそれぞれの団体の方針により、大きく異なります。

今回は、子どもにどのような体験させてあげたいかを基準に整理してみようと思います。

対象年齢

宿泊体験となるとほとんどは小学生以上が対象となっているはずです。未就学児が対象のキャンプとなると保育も必要なことから数は少なくなってきます。自然体験や冒険体験に主眼が置かれており、リスクを伴うアクティビティを含む場合は小学校高学年以上、中学生以上と制限がかかっている場合もあります。高校生以上が対象のプログラムになると、異文化理解、精神的成長、チャレンジ、チームワーク、コミュニケーション力の向上、英語学習、IT学習など個別のテーマに主眼が置かれているプログラムも見受けられます。また、野外学習の手法は社会人が対象の企業研修などで用いられることもあります。

プログラム期間

一番短いのは日帰り(デイ)プログラム。日本で多いのは1泊2日のキャンププログラム。長いものだと登山遠征などを含めた1週間程度のプログラムが展開されています。アメリカなどでは夏休み中に2週間~1か月のキャンププログラムが提供されています。これは文化背景の違いが影響していると言われています。アメリカでは夏休みが長く、サマーキャンプに行くという文化が根付いており、同じ環境と仲間たちに囲まれて長期間でいろいろな体験をして成長し、その間親も子どもがいない時間を楽しむという風潮です。一方で日本では長期受け入れが可能なキャンプ場が少なく、そもそも夏休み(お盆)は田舎に帰省するなどの風習があり、親の意識としても何週間も子どもを外部の人間に預けることに抵抗があるようです。

人数

参加人数は10名程度~120名程度のキャンプがほとんどだと思います。年齢によって分けられたキャンププログラムを複数同時並行で実施している団体などもあり、キャンプ場では他のグループと会うこともあります。少人数の方が自由度が高く、大人数になるとどうしても学校に雰囲気が似てくる気が個人的にはします。一方で参加費は少人数で高く、大人数では安くなるのが一般的です。

人数に関して注意したいのは、全体の参加人数ではなく、参加者とスタッフの比率です。一般的にスタッフの目が行き届く限界は参加者:スタッフ=6:1と言われています。筆者がプログラムに関わるときは絶対にこれ以上の比率でスタッフを集めていますし、必ず全体を見たり自由に動けるスタッフを配置しています。スタッフの比率がこれ以上低いと事故やトラブルが発生する確率が上がります。

参加費

参加費についてはキャンプ場の設備、プログラムの内容、スタッフの質などによって差が出てきます。たいてい保険料、食費、施設利用費などは含まれています。また、遠隔地で実施されるプログラムでは別に交通費がかかる場合もあります(無料バスが出る場合もある)。

相場は日帰り5000円~、1泊2日15,000円~、3泊4日50,000円~というイメージです。だいたい1日1万円+αというイメージです。

ただし、24時間体制でスタッフが関わってくれている、日常生活以上の安全管理・リスク管理能力が必要とされる、子どもを成長させるスキルのあるスタッフが必要、親も子どもがいない非日常の数日間を過ごせる(笑)…などを考えると、あまりに安いプログラムに大切なお子さんを送り込むのも考え物かなと思います。

キャンプサイト

キャンプが開催される場所も様々です。

  • その団体が所有しているキャンプ場:ほぼ貸し切り状態となるのが通常で、森や湖、ボートやアーチェリーなど様々な設備を持っていることが多い
  • 公共施設(青少年自然の家など)を利用:宿泊費が抑えられるので、参加費が安くなる場合が多い。他の利用団体と同時利用になる場合もある
  • 山や海辺など自然に近い環境でキャンプする:よりワイルドな体験ができる。冒険教育(アドベンチャー教育)などで使われる

【環境】

  • 山のフィールド:ハイキング、登山、遠征、ビバーク、自然観察、焚火、スキーなどのアクティビティが実施しやすい
  • 海のフィールド:海水浴、スノーケリング、ダイビング、磯の生き物観察、カヤック、ボート、SUPなどのアクティビティが実施しやすい

団体のポリシー

それぞれの団体によってポリシーが異なります。それぞれ目指す理想像が異なるため、それによりプログラムの内容も異なってきます。

  • キリスト教精神がルーツにある:YMCA、YWCA、今日かいキャンプなど…全人教育的な観点のキャンプが多い。もともとの組織キャンプのルーツはここにある。感謝、礼拝、思いやりなどをテーマにするキャンプも。
  • 自然体験型:「自然の中で過ごす時間」を中心に位置づける。五感を使ったり、夜に自然の中で過ごす、焚火をおこす、など。
  • それぞれのルールがある:スカウト、クラブ。それぞれの目標に向かって集団生活を過ごす。合宿的な要素が強い場合も。
  • 冒険教育型:困難な課題を仲間と乗り越えることで自己研鑽、成長を目指す。登山遠征や、ロッククライミングなど、ハイリスクハイリターンな活動を行う場合も。

まとめ

いろいろなスタイルなキャンプがあるため、迷っている方も多いはずです。まずは、家族で「どういう大人になりたいか?」「どういう大人に育ってほしいか」という考えを共有するのが良いでしょう。

また、初めて行くキャンプというのはその子にとって、一大イベント。そこで嫌な思いをすると、その後ずっと引きずってしまいます。最初のキャンプを選ぶときに一番力を注ぐべきです。ぜひ相性の良いキャンプを探してください。(個別でお問い合わせをいただければアドバイスできます。)

筆者が好きな言葉を贈ります。ドイツの教育学者で、冒険教育の祖とされるクルト・ハーン(Kurt Hahn)の言葉です。

"It is wrong to coerce people into opinions, but it is a duty to impel them into experience" 

「大人が子どもたちに考え方を強いるのは間違っている。しかし、経験を強いるのは義務である」

 

多くの自然学校がコロナウイルス感染拡大の影響で苦しんでいます。

未来への投資だとおもって、「自然学校エイド基金」を通じた支援をよろしくお願いいたします。

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