日常生活で目にする掲示やお知らせもだいぶ外国語併記がされるようになってきました。英語、中国語、韓国語などが併記され、外国語話者にとっては大変助けになっているのではないかと思います。
一方で、どうしてこういう翻訳したの?と疑問に思う部分も多々あります。文法的に正しくなかったり、意味が分からない翻訳を付けていては、恥ずかしいだけです。企業の担当者の方は自動翻訳だけでなく、ぜひネイティブチェックを行うようお勧めします。
さて、とある昼下がり…用を足そうとスーパーのトイレに入り、ふと目をやるとお子様用シートの説明シートがあります。よく見るとアヤシイ英語が何カ所か。あなたはいくつ見つけられますか???
主語がわからないものや…
theの使い方がよくわからないものや…
さぁ、見ていきましょう。
① "The seating face will open."
「座面」=「座」+「面」を直訳したかったからseatにingを付けて形容詞っぽくしたのでしょうか?"seating"とすると「着席すること」「劇場などたくさんある座席」という意味になってしまいます。今回の日本語からすると"seat"で十分だと思いますが、どうしても「座面」と言いたければ"seat face"でいいかなと思います。もう一つ、人が引いて座面を開けると前の分にあるので、”The seat face will be opened"と受動態にしたほうがきれいでしょう。
②childに付ける冠詞について
このお知らせの中でchildに付ける冠詞について"the" "your" "無冠詞”という3種類の表記が混在しています。"the"が付くとこのお知らせを書いた人と読む人の頭の中で共通の子どもがいることになり、すこしおかしいですね。childは単数形なので無冠詞で使うことはできず、不定冠詞"a"を付けると、「たくさんいる子どもの中の一人」という意味になります。この場合は、お知らせを呼んでいる人の子どもに対して一方的な呼びかけなので"your"が良いでしょう。
"Seat YOUR child as shown in picture" (命令の口調になるので、"Please let your child sit as shown in picture"などとした方が丁寧ですね。命令形は日本の人が思っている以上に、英語話者をドキッとさせます)
③「元に戻す」の英語
「元に戻す」の英訳がreturnとなっています。細かいですが、returnは「それ自身が自分の意思で移動して元の位置に戻る」というニュアンスに近いです。今回は人が操作して元の状態に戻すということなので"Please put the chair back to the original position"といったほうが綺麗でしょうか。
④「目を離さない」
"Watch your child."と言われると、ドギツイ感じで「ずっとオマエの子どもを見ていろ!!」というニュアンスになります。冷静に目を離さないでくださいと言いたい場合は慣用句を使って"Keep an eye on your child"というと自然な感じになりますね。
⑤「立たせる」
「座面/ガードに立たせない」"Do not stand child on seat or guard."とあります。辞書で調べると確かに"stand"=他動詞「立たせる」という意味もあるのですが、standは自動詞「立つ/立ち上がる」という意味でつかわれる場合が多いですね。そのため、standの後に名詞(目的語)が来るととても違和感があります。"Do not stand"まで読んだ時点で「(あなたが)立たないで!」というメッセージに読めてしまいます。使役動詞を使って"Do not let your child stand on the seat or the guard."と言えると自然な英語になるでしょう。
⑥お子さまに開閉操作をさせない
ここでは使役動詞allowが使われていてとても読みやすいのですが、"the child"となると「その子ってどの子?」と思ってしまいます。"your child”だとしっくりきますね。開閉作業を否定の分で使う時は「開けてもダメ、閉めてもだめ」なので"Do not allow your child to open or close"がよいでしょう。
⑦place 入賞?
タバコ押し付けないでという意味で"Do not place or touch with cigarettes or other burning object"とありますが、この場合placeとtouchは自動詞として使われています。placeが自動詞の場合「〇位に入賞する」という意味です。何かを「その位置に置く」という場合は他動詞で使いましょう。touchも何かに触れる場合は他動詞として目的語を必要とします。"Do not place or touch cigarettes on the chair"で十分でしょう。"burning"とは炎が上がっているイメージですが、トイレに持ち込める炎上しているものって何でしょう?(笑)
⑧"Be careful to avoid hitting child"
これは完全に「あなたは子どもをたたかないようにしなさい」としか読めません。childに冠詞がないので、そこらへんにいる子どもを差すのでしょうか?主語が命令形のために省略されているyouだから意味が間違ってしまいます。"Please be careful not to hit your child by the door."これで必要十分ではないでしょうか?最後のetc.の意味もよくわかりません。
TOTO担当者さま、もう少し頑張ってくださいね。
おあとがよろしいようで。
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